第8章 面影
どうしましょう…と煉獄さんに助けを求める視線を送るより先に、
「女将!相変わらず精が出るな!だが我らは師弟の間柄ゆえ、恋人ではない。勘違いをさせてしまい悪かった!」
「あら~~そうなのですか?本当にお似合いだったのでついね、私もはやとちりしちゃったわ~ごめんなさいね」
右手をひらひらとさせてそう言う女将は、全く反省している様子はない。が、明るく素直な方ということが伝わってきた。
こちらの方にお着物ね、と言いながら、また女将さんは店の奥へと向かって行ってしまった。
女将さんの後を、辺りの着物を見ながらゆっくりとついていったのだが、私はその値段に驚いた。
煉獄さんの左腕に軽く触れて呼び止め、私には高級すぎると伝えたのだが
彼は案ずるなと自信ありげに言うので、私は見せてもらっても買わずじまいになるのではと不安になりながらも、そのままおずおずと店の奥に進んでいった。
女将さんが次から次へと、これはどう?これも似合うわね~と見せてくれた着物はどれも本当に美しかった。
あまりにも多くの着物を出してくれて、これでは選びきれませんと痺れを切らしそうになった私に気が付いたのか、煉獄さんが女将を制してくれてやっと彼女の連弾が止んだ。
ーーー
今目の前には、青藍、茜色、白百合色の3枚の着物が並んでいる。
(やっとここまで絞りきれたわ…)
そう安堵していると、女将さんがそれぞれの色の説明をしてくれた。
「あなたは色が白いから、どの色でも映えますわ!
青は知性や冷静さ、赤は生命力と情熱、魔よけの意味もあります。白は穢れを清め、次の世界への旅立ちといった意味ですわね。」
「…では、こちらを頂こうと思います。」
「はは、潔いな!」
即決だった。
次の世界への旅立ち…今の私にぴったりではないか。
私は白百合色の着物を指し、女将に伝えた。