第8章 面影
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は、無限列車で杏寿郎に出会う前、兄弟子がいて彼は自分を庇って鬼に殺されたこと、その時のことが先刻の兄妹と重なり、当時のことを思い出してしまったことを杏寿郎に話した。
お館様からは伺っていない情報であったため
杏寿郎はの話を静かに聞きながら、内心では驚きと鬼への怒りが湧き出していた。
は続けて
「…強く生まれた者は、弱き人を守る。
これは、生まれながらに肉体的な強さを持った私の責務だと…思っています。それに気づかせてくれたのは、その兄弟子、稔さんだったのです。……煉獄さんは彼をご存じですか?」
冒頭のそれは杏寿郎が幼い頃、母から託された言葉だった。
の口から同じことを聞いたのは、さらに杏寿郎の胸を突いた。
が、次の言葉で合点がいった。
「あぁ…知っている。稔は俺の父上が鬼から救い、その後鬼殺隊士となったのだ。よくうちに来て共に稽古に励んでいて、俺にとっても兄のような存在であったな。」
まさか死んでしまったとは…。
鬼殺の剣士である以上、死とは常に隣り合わせだ。
を守って使命を全うした稔の、清らかでひたむきな想いは尊く愛おしい。
「……稔は己の責務を全うしたのか…」
暗闇に杏寿郎の声が響く
の目から、さらに一筋の涙がこぼれた。
「彼のように私もなりたい…ならなければいけない。 そんな思いでこれまで鬼狩りを続けてきました。…けれど、私はいまいち自分らしい戦い方がわかっていません…。」
自分の感情すら意のままにできないですし…とは続ける。
「…そう自分を責めるな。今の心の中には様々な感情が入り混じっているのだろう。
喜怒哀楽を感じるのは生きているからだ。生を受けたことに感謝し、人であることを純粋に愉しみなさい。
自分の戦い方に迷いがあるのなら、その迷いがなくなるまで俺が面倒をみてやる。これから俺の元で鍛錬をしながら、共に探っていこう。」
なんて、逞しい人なのだろう。杏寿郎のその言葉はまさにがずっと欲しかった言葉であり、ピンと張りつめていた糸がほどけたような気持ちになった。