第8章 面影
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あの幼い兄妹に会ってからの様子に少し変化があった。
落ち着かないような…落莫としたような…
ここに来る途中どうしたのか聞こうとしたのだが、話してはくれなかった。
俺には話したくないことなのであろうか、頑なに口を閉ざす彼女にこれ以上質問するのは野暮かもしれないと思い、訊くのをやめた。
しかし、夕餉の時もずっと思いつめたように元気がなかったため、明日は焼き芋でも作ってやろうかと思い、俺は布団に横になった。
眠ろうと瞼を閉じるのだが、彼女のあの様子が気になってなかなか寝付くことができない。
カタっ…と、外から音がした。
縁側に誰かいるのだろうか…
耳を澄ませていると、
「うっ……うぅ…」
声を押し殺したような、の泣き声が聞こえた。
驚いた俺は布団から出て、そっと扉を開け、しゃがみこむの元へとゆっくり歩く。
彼女はこちらに気づいていない。
一枚の寝間着姿で寒そうだ。
着ていた羽織を脱ぎ、彼女の肩にそっと乗せると
眉を下げ濡れそぼった瞳と目が合った。
泣いていたためか、鼻先も桃色に染まっている様は俺の情緒をくすぶった。
もう、野暮とかどうとかはどうでもいい。
彼女のことを、もっと知りたい。
それは純粋な気持ちであった。
「…俺には、なんでも話してくれないか…?」
思わず、俺はの頭を撫でていた。
彼女はそれを受け入れ、また俺を上目遣いで見上げてきた。
いつものしゃんとしているとはかけ離れたものだった。
…守りたい
そう思った俺は、ごまかすように彼女の涙を拭った。
俺の行為を受け入れるように、の目からはさらにぽろぽろと涙が溢れてきた。