第8章 面影
この子たち二人は、家に帰る途中で寄り道をしていたところ、道に迷ってしまったらしい。
女の子が落ち着いたころ、私たちは彼らを家まで送り届けることにした。
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「あっ!ここら辺見覚えがある!」
人里まで下り、歩みを進めていると男の子がそう言った。
煉獄さんの背でうとうととしていた女の子も、道に覚えがあったらしい。表情が明るくなった。
「あ!母ちゃんだ…!」
安堵し甘えるような声でそういう男の子の目線を追うと
角を曲がった先のある家の前で、心配そうに辺りを見回している女性がいた。
「よし、ではここからはふたりで行けるか?」
煉獄さんが、女の子を下ろしながらそう言った。
帯刀をしている私たちが必要以上に一般市民に関わるのはいらぬ争いを生むことにもなる。
「うん!ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
「…俺、姉ちゃんみたいに強くなりたい。強くなって、もう里子にこんな思いさせないようにしたいんだ。」
男の子がまっすぐな瞳で私を見つめる。
「…うん、なれるわきっと。その気持ち、これからも忘れないでね。」
そういい笑顔を向けると、男の子もまた笑顔になり俯いた。
しかしすかさず
「うむ!だがその前に、寄り道をせず夜になる前にまっすぐ家に帰ること、いいな?」
煉獄さんは男の子の頭にぽんと手をのせ、そう言うと
行きなさいと言うように彼らを母親の方へと促した。