第8章 面影
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次の日の夕方、ようやく二人の刀の準備が出来た。
研ぎ上がった刀の確認をする煉獄さんの横で、私は受け取った脇差しを鞘から抜いた。
「美しい蘇芳色(すおういろ)ですね…あなたの瞳と同じだ…」
ゆっくりと先端に向かって色が変わっていく私の刀をみて、刀匠の鉄穴森さんがそうつぶやいた。
なんだか、自分の瞳を褒められたようでこそばゆい。
「…刀を打ってくださって、ありがとうございます。」
あぁ…しっくりくる。
「む、の刀は蘇芳色なのか。
とても綺麗だな。」
煉獄さんもこちらに顔を向け、笑顔でそう言ってくれた。
お礼を言い、改めて刀に目を落とす。
確かに私は炎の呼吸を使うが、刀の色は稔さんや煉獄さんのものと比べると少し濃いように思える。
赤は赤なのだから、特段違いはないだろうと今まで考えないでいたが、そんなに注目されると気になってしまう。
同じ呼吸を使う剣士の間でも、刀の色の若干の違いなどあるのか聞こうとしたが、やめた。
当然にあるのだろう。大したことはないと思ったからだ。
刀匠の人たちにお礼と別れの挨拶をして建物を出ると、わたしの鎹鴉がふわりと降り立った。
「、杏寿郎!チカクニ鬼ガイルッ!カーア!」
わたしと煉獄さんは顔を見合わせた。
「ツイテコイッ!イソゲ、イソ~ゲ!」
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鴉の道案内についていくと、とある山に着いた。
ちょうど日が沈み、東の空に細い月が浮かびあがった頃だった。
「こちらで二手に分かれましょう。わたしは東から参ります。」
「うむ、そうだな。俺は西から行こう。の剣裁きを見たいところではあったが、それはまたの機会だな。
くれぐれも気を付けるように。」
「ふふ、えぇ。煉獄さんもお気をつけて。」
目が合い、少しの間があった後
私たちは互いに背を向け進みだした。