第8章 面影
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「うまい!!!」
「ふふ、おいしいですね」
と杏寿郎は夕餉を囲んでいた。
炊き込みご飯に季節の野菜の天ぷら、牛肉のしぐれまである。
久しぶりにこんな豪勢な食事をするは、はしゃいでしまいそうになるのを堪え
ひとくちご飯を食べるごとに「うまい!」という目の前の杏寿郎を見つめ、微笑んだ。
「それにしても、煉獄さんはすごい量を召し上がりますね」
「む?そうでもないぞ! 俺の継子に甘露寺という女子がいたのだが、彼女はこれの4倍は食べていたな!」
甘露寺…蜜璃ちゃんだ…!
は蜜璃の名前が出たことに顔を明るくしたが、杏寿郎がすでにふたつめのお櫃を空けようとしている様を見て驚愕した。
「食べたものはそのまま己の力になる。も、遠慮せずにたくさん食べるといい!俺の天ぷらをあげよう!」
「…っ!ありがとうございます!すごいですね…私もたくさん食べて煉獄さんのようにもっと強くなります!」
「うむ!その意気だ!」
私も、人よりは食べる方だけれどさすがにこんなには食べられない。
やっぱり柱はすごいんだなと、改めて思った。
「…あっ、実は温泉で蜜璃ちゃんに会いました。すでに発ってしまいましたが煉獄さんに会いたがっていましたよ。よろしくお伝えくださいとのことでした。」
「すでに知り合いだったか! ここで会うとは奇遇だな、後で文を出しておこう。」
その後は蜜璃の話や互いの刀のことを話したのだが、会って間もないこともあり、二人の間を流れる空気はまだ少しぎこちないものだった。
「刀の準備が出来次第、俺の家へ向かうことになるが良いか?」
「はい、もちろんです!」
杏寿郎の継子となったは、これから煉獄家に住まうことになる。
どんなところなのだろうと、すこし不安に思う気持ちもあるが、それよりも新たな生活が始まる期待の方が大きい。
「早く刀が整うといいですね」
はこれからの生活がうまくいくよう、願うようにそうつぶやいた。