第7章 夢か現か
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甘露寺蜜璃…鬼殺隊の柱の一人である彼女もまた、刀の刃こぼれを直してもらうため刀鍛冶の里に来ていた。
昨日から滞在しているのだが、鬼殺隊には女性が少ないためか、これまでもここで他の女性隊士と会うことはなかった。
(…温泉をひとり占めできるのは良いけれど、やっぱり寂しいわね…)
そんなことを思いながら、今日も温泉に入ろうと石段を上っていた。
しかしあろうことか、そこには先客がいたのだ。
蜜璃の心はキュンと音をあげて跳ねた。
先に温泉にいた彼女は黒髪をひとつにまとめていて、そのうなじから肩にかけての曲線が、滑らかな白い肌によって艶めかしく映っていた。
(きゃぁ!女の子だわ~!綺麗な人ね、私より年上かしら…?でも関係ないわ、仲良くなれるといいわ…!)
蜜璃が心の中でガッツポーズを構えたところで、彼女が振り向き目が合った、
(きゃ~!目が合っちゃったわ!どうしよう…あっ挨拶しましょう!)
「こんにちは」
「はっはじめまして!」
…二人の声が重なってしまった。
「…ふふっ」っと二人して笑った後、が"一緒に入りましょう"といい、蜜璃も温泉に浸かった。
そしてお互い自己紹介をしたとき、蜜璃はの名前をついこないだの柱合会議で聞いたのを思い出した。
「ちゃんって、あのはっ…、れ、煉獄さんの継子のちゃん??」
「?そうなの、でもどうして知ってるの?」
「こないだの柱合会議で聞いたのよ~、上弦の参との戦いの子細も聞いたわ、もう本当に体大丈夫なの?」
思わず"白羅族"と口走りそうになったのを必死で止めた蜜璃はとても焦った。記憶を無くしている本人には、まだこのことは伝えない方が良いというお館様の判断で、柱以外の者には口外しないと決められていたのだ。
「柱合会議…?ということは、蜜璃ちゃんも柱なのね!すごいわねぇ、尊敬するわ!」
そんなことは露も知らないが牡丹のような笑顔でそう言うので、蜜璃の心は少しだけチクっとした。