第7章 夢か現か
杏寿郎は産屋敷邸の長い外廊下を歩きながら、先ほどのお館様の話を、心の中で反芻していた。
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昔、日本には白羅族という傭兵部隊がいたらしい。
彼らは時代ごとに天皇や幕府に使えており、国内外での対人戦で重用されていたそうだ。
"最恐の傭兵部族"という異名にふさわしく、彼らは人間でありながら屈強な体、人外な回復力を持ち、好戦的な性格とそれらを駆使し、数々の大戦で勝利の立役者となっていたそうだ。
しかし、江戸から明治に変わるころ、
彼らの驚異的な力を恐れた政府は、これからの時代にそぐわないということで、白羅族を解体、秘密裏に抹殺しようとした。
その噂を耳にし、彼らを鬼殺の隊員として活用するため という名目で救ったのが、お館様の曽祖父にあたる、当時の産屋敷家当主であったのだ。
その当主の提案に政府も渋々承諾をしたのだが、彼は白羅族に鬼殺隊になることを強制はしなかったらしい。
普通の人間として、平和に生きたい者たちは去った。
しかし、もともと殺しを生業としていた部族だ。大半の者は生きる手段として、鬼殺隊となることを快諾してくれた。
結果として、その時代鬼の勢力が増しており、劣勢を強いられていた鬼殺隊は、彼らの協力で劇的な快進撃をみせた。
あの鬼舞辻をあと一歩…のところまで追いつめたと
思っていたところ、
白羅族の隊士が次々と行方不明、殺害されていったのだ。
生き残った一部の鎹鴉の報告から推察するに、白羅族に屈辱を味わされた鬼舞辻は、彼自ら、もしくは配下を使って白羅族を優先的に殺害していったと考えられる。
そうして結局、白羅族の隊士は一人残らず殲滅されてしまったのだ。
現在でも稀に、街で暮らしていた白羅族が狙われたという報告があるらしい。
あの女性隊士、はその白羅族の末裔であるということだ。
お館様は、今後彼女を狙って襲撃があるかもしれない。鬼舞辻が尻尾をみせる可能性が高くなると見ている。
鬼殺隊として、その機会を逃したくはない。
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そうこうしているうちに、杏寿郎はとある間の前に着いた。
中に入り、用意されていた座布団に腰を下ろした。