第7章 夢か現か
私たちが話していると、一人、隠の人がこちらにやってきた。
彼は縫製係の"前田"と名乗り、ちょうど私の新しい隊服が完成したことを教えてくれた。
「新しいものは病室に置いておきますね。でも一応、サイズの確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
噂通りの美人だ…などと言いながら私の肩や腰に触ろうとした彼は、しのぶちゃんと炭治郎に止められていた。
「もう完成しているなら、測る必要ありませんよねぇ?」
「さんは良いスタイルをお持ちなので、その必要はありません!」
ピキピキと怒りの雰囲気を漂わせる二人に圧倒されたのか、前田さんはそのまま後ずさりしてどこかへ行ってしまった。
「…まったく、あのゲスメガネ…油断も隙もありませんね」
「えっ…あの……」
状況が把握できない私は二人に説明を求めたが、しのぶちゃんは続けて、
「そうそう、さん。お館様が、さんとお話をされたいそうです。お目覚めになったと鴉で報告しておきますので近々お呼びがかかるでしょう。しばらくうちでゆっくりしていってください。」
「ありがとう、助かるわ。…そういえば煉獄さんはどちらに…」
「煉獄さんもあの戦いの後ここで静養していたのですが、先週任務に出ていかれました。」
そうだったのね…と返す私の心が、ちりっと傷んだのは
感じなかったことにする。
その日は、炭治郎たちについて蝶屋敷の中を案内してもらった。
その途中途中に出会う、お手伝いの女の子たちや隊士に挨拶をしていったのだが、鬼殺隊の仲間に会うのは久しぶりで
私は心が躍った。
ひとりじゃないと、感じられたのだ。
あっという間に夜になり、私は再び寝床についた。
今日は色んな人に会い、目まぐるしくて忘れていたけれど…
(眠っていた時にみた、あの夢…何だったのかしら…)
私はうとうととしながら、先日みた夢の子細を思い出そうとする。
きっと、思い出したところでどうにもならないのだが。
あの不思議な、幸せな感覚。
ただあれに浸っていたいのだ。