第7章 夢か現か
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杏寿郎が蝶屋敷を発ってから一週間が過ぎたころ、はようやく目を覚ました。
静かな病室には誰もいない。
ゆっくりと体を起こしたの脳内に、刹那、
夜、このベッドまで杏寿郎に送ってもらったことが思い起こされた。
だが長く眠っていたせいか、まだ夢とうつつの境界線が曖昧な感じがし、その事実はの中で現実味を帯びていない。
急に不安になったは綺麗に畳まれた濃紺の自分の羽織がそばの机の上にあるのに気が付き、それを手に取り胸の前に抱えた。
しばらくそうして、羽織に顔をうずめていると、外から元気な声が聞こえてきた。
羽織を置き、その声に引き寄せられるように外に出てみると
そこにはあの無限列車で出会った少年たちがいた。
「…いけ!がんばれ、善逸!そう、がーっと!!」
鍛錬をしているのだろうか、善逸と呼ばれた金髪の少年が、大きな石に括りつけた紐を引っ張るのを赤髪の少年が応援している。
赤髪の少年、あの時、が刀を預けた少年がこちらに気が付いた。
「…あぁ……」
その少年はを見て息をのみ、今にも泣きだしそうな顔をしてこちらに駆け寄ってきた。
「目覚めたんですね………よかった………本当によかった……」
続けて金髪の少年もこちらに来た。
「あ、あの…あなた、無限列車に乗車してましたよね…?炭次郎から、とても酷い怪我を負ったって聞いて…俺、すごく心配していました…」
「…すみません、自己紹介がまだでしたね。俺は竈門炭次郎、こっちは我妻善逸です。それで……」
「ぅおーーーーーりゃーーーーーーー!!!!!!!!」
「えと、あの走っている猪の被り物をしたやつが嘴平伊之助です!」
は鍛錬に励む彼らに感心するとともに、怪我をした自分を案じてくれていた彼らが可愛く、愛おしく見えた。