第6章 綿毛の君
ベッドの上の彼女は、昨日と変わらず眠り続けていた。
俺は彼女を見つめながら
(怪我が早く完治すれば良いのだが…)
(彼女が元気になったら、竈門少年たちを誘って花見でもしようか…)
など、考えていた。
「彼女のこと、気になりますか?」
振り返ると、胡蝶が入り口のところに立っていた。
「いや…」
……思わず否定してしまった
胡蝶の言い方が、何か含みをもっているようだったからだ。
そういう、やましい気持ちは一切ない。
俺は、彼女を一人の隊士として心配しているのだ。
(……む?なぜ俺は焦っている?)
なぜか自分の思考を整理しようと焦っている自分に気が付き、さらに焦る。
珍しく歯切れの悪い俺に、胡蝶は少し間を置いて
「彼女ですが、傷の治りが異様に早い。今回受けた外傷は、普通の人であれば死んでいてもおかしくありません。彼女は………一体何者なのでしょうか…」
…どうやら俺の焦燥感は伝わっていなかったようだ。
胡蝶が彼女の体質について話をしたことにほっとしたのもつかの間、確かに彼女はどことなく、俺たちとは違う雰囲気を纏っているようにも感じられた。
「…上弦の参との彼女の戦いぶりは、実に見事であった。
傷の治りの早さもそうだが、彼女は常人よりも強靭な体をもっている。素手であの鬼の、硬い体を抉ったんだ。」
「刀を持たずに戦ったとは聞いていましたが…
…まぁ、そうだったのですね…こんな華奢な方が…」
驚いたように目を大きくする胡蝶は、眠る彼女にますますの好奇の目を向け始めた。
「…なんにせよ、彼女は人間であり、鬼殺隊員だ。
今度の臨時柱合会議で、そのことについてお館様から何かお話があるのではないか?」
胡蝶の注意をそらすように俺が言うと、彼女は そうですね~ と、ふわりとどこかへ行ってしまった。
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