第6章 綿毛の君
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は、ベッドの上で唐突に目を覚ました。
「…はぁっ……はぁっ………」
不気味な夢を見ていた。
全身、じっとりと汗をかいている。
(ここ…は…?どこ…)
まだ夜のようだ。辺りをよく見ようと起き上がろうとするが、
「いっ……」
鳩尾に鋭い痛みを感じた。
思わずそこに手を当てると少しくぼんでおり、私は上弦の参との戦いを思い出した。
(あの後…私は気を失ってしまって………皆は…? 列車の乗客たちも、無事なのかしら…)
あらゆる思考が脳内を駆け巡る。
しかし、なんだか頭がぼんやりするのだ…
(ふぅ……)
私は視線を落とした後、木枠窓の外へ目を向けた。
そこには、玲瓏たる満月が浮かんでいた。
しばらく、ぼんやりとそれを見つめていたのだが、私の体は引き寄せられるように、自然と建物の外へと歩きだしていた…
置いてあった庭履きを拝借し、私は縁側の前で月を見上げていた。
((ドサッ…ゴロゴロ……
右奥で何かが落ちる音がした。
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(…よもや………)
俺は、亡き母上の亡霊を見たのかと思った。
あの無限列車での任務を終えた後、俺たちは怪我の治療のため蝶屋敷へと運ばれた。
それから10日が過ぎ怪我もだいぶ治っては来たのだが、俺は内臓が深く傷ついていたらしい。胡蝶にしばらくここで静養するよう言われてしまった。
今日は、いつもより早く目が覚めてしまった。
まだ月が浮かぶ暁であったが、今朝はさつまいもの味噌汁が食べたかったので、井戸の水を使ってさつまいもを洗っていたのだ。
(よし、これを調理場に置いておこう!)
俺は朝餉を楽しみに、逸る気持ちを抑えながら入り口のある庭へとまわった。