第5章 遭遇
「…殺す拳で殴ったのだが……」
の口元は切れ、鼻血もでていたがそれだけで、
頭はもげていなかった。
猗窩座は上弦である自分が、刀を持たない素手の鬼狩りに傷をつけられる、さらに攻撃を受けるという異常事態に、困惑していた。
(…問題ない、俺の"羅針"はどんな攻撃も感知する。
それに人間である以上体力の限界が来るはずだ…)
「術式展開、破壊殺、空式!!」
猗窩座が技を繰りだす。
それにこたえるように、杏寿郎も技を出す。
も、杏寿郎に助太刀するように、攻撃の合間を縫って応戦する。
互いに炎の呼吸の使い手であったことが功を奏した。
杏寿郎との息は、ぴったりだった。
二人の攻撃に、猗窩座は押されていた
(まずい、このままでは埒があかない…! せめてこの女だけでも…!)
猗窩座は渾身の力を込め、の脇腹に蹴りを入れた。
「ぐはっ………」
は猗窩座の攻撃をまともに受け、そばの林の中に飛ばされてしまった。
ドシャっ…!
は木に体を思いきり打ち付け、地面に突っ伏した。
「くっ……」
(あばらが……折れたわね…)
痛い。
いくら強靭な体をもっているとはいえ、だって、
怪我をすれば人並みに痛いのだ。
(ずいぶん遠くまで飛ばされてしまったわ…)
戻らなければ…
はこれまでにない、強すぎる相手にめげそうになる気持ちを堪え、走った。
「…俺は俺の責務を全うする!!ここにいるものは、誰も死なせない!!」
杏寿郎の声が聞こえた。
二人の姿が…見えた…
ドオーーーーーーーンッッッ!!!!
激しい衝突音
杏寿郎は猗窩座に斬りかかろうとしていた。
しかし猗窩座もまた、杏寿郎の体へと、拳を振り上げている。
(間に合え……間に合え…!!)
は足に集中し、全身の力を込めた。
(煉獄さん……煉獄さん………煉獄さん…!!!)
炭治郎は祈るように、砂埃の舞う二人がいるであろう場所を見つめていた。
舞う砂埃が落ち着いて、姿がはっきりと見えるようになってきた。