第1章 追憶
目の前の3両目への通関扉が開き、妙齢の女性がこちらへやってきた。
彼女は深紅のワンピースを着ていた。
ウエストから腰にかけてのなだらかな曲線が美しく、なんとも上品な佇まいであった。
真っ白な肌に映える小ぶりな唇。
その唇には赤い紅がさされていた。
瞳は赤みがかっており、
彼女は…少し冷たさを帯びる美人だった。
また、その気配…
人間…ではあるがどこか違和感のあるものだった。
一時静まる四人…
善逸は鼻の下を伸ばしながら彼女をジロジロと見ている。
「善逸っ…!」
炭治郎が彼女に悟られないよう、声をかけるも全く聞く耳をもってくれない。
伊之助まで、
(なんだアイツ…強ぇえのか…?)
と言わんばかりに被り物の猪の眼を輝かせながら彼女に注目している。
この失敬な二人をどう落ち着かせようかと、炭治郎はあたふたとしていた。
彼女が四人の間の通路に差し掛かった時、
彼女は杏寿郎を一瞥し
瞳を合わせ、わずかに微笑んだ。
…ような気がした
(なんだろう……彼女から一瞬、安心感…?なつかしさ…?の匂いがした…)
「煉獄さん…お知り合いですか…?」
「いや…」
杏寿郎も彼女の雰囲気から何かを察したらしい。
先ほどまで炭治郎たちと話していた時のような威勢の良い声ではなかった。
「えぇ!!!なになになんなの!!!!あなたあんな美人な女性とどこでお知り合いになったんですかっっっ!!!!!!!!」
「うるさいぞ善逸!!!煉獄さんは知らないって言ってるんだ!!」
「ひえーーーーーーー!!!!!!!羨ましい羨ましい……羨ましくて禿げそう………!!!!!!!!!!!」
炭 (だめだなこれは、しばらくそっとしておいてあげよう)