第5章 遭遇
は衝撃音のした列車の先頭の方へ急ぐ。
その先には "上弦・参"と、両の瞳に刻印されている、男の鬼がいた。
そして、その鬼に対峙しているのは、あの、炎の羽織を風になびかせる、派手な髪色の剣士だった。
(昔…稔さんが言っていた……あれは…炎柱の煉獄という人かしら……)
杏寿郎の後ろ姿を見つめながら、は思った。
彼らの手前で、炭治郎は地面にうずくまっていた。
眼前の二人を緊張の色をみせながら凝視していた。
「君…!大丈夫…!?怪我をしているじゃない…!」
は炭治郎の側へ行き、彼の頭に手を添えて話しかけた
(この匂い……車内で見かけた人だ…!)
「はっ…!それより…俺より煉獄さんが…!」
炭治郎がすがるような眼でを見上げる
(やはり…彼は煉獄家の……)
この少年は、あの柱の継子なのだろうか…
はふと、目の前の彼が自分に見えた
その時、
ドォンーーーーーッ!!!
という音がし、上弦の参と杏寿郎の戦いが始まったのだと理解した。
(なんという…攻撃の速度と威力なの………これが上弦の力…)
「煉獄さん…煉獄さん……!」
炭治郎は加勢しようと思っているのか、自分の刀がどこにあるのか探しているようだ。
は思った。
(あの柱は強いわ、上弦の参とほぼ互角に渡り歩いている…でも…でも……いつかは肉体に限界が来てしまう……)
自分が、助けなければ。
(私が少しでもあの鬼の動きの邪魔ができたら…きっと、あの炎柱が鬼の首を斬ってくれる………)
託されたものを、繋いでいく。
たとえ、自分の命を懸けてでも…
この少年に、自分と同じ悲しみを、味わわせたくない。
は鞘をつかんでいた左手にぐっと力を込め、それを腰から抜いた。
「君に……これを預けるわ。もしもの時は、この刀を使って?」
(日輪刀…この人も鬼殺隊だったのか…!)
炭治郎はが鬼殺隊士であることを理解したが、なぜ刀を自分に託すのか、わからなかった。