第5章 遭遇
信じられない…。
列車の中が、こんなに鬼の肉で埋まっていたなんて…。
(鬼殺隊士として、情けないわ…)
目覚めてすぐに状況を把握し、隊服に着替えた私は愕然とした。
肉が触手のように伸びてくる。
私は他の眠っている乗客たちを守るようにそれらを斬っていく。
つい先刻まで、私は無限列車の5両目の座席で眠りについていたのだ。
なぜこんなになるまで目覚めることができなかったのか。
(切符を車掌に見せたとき……あの時に、鬼の術が発動したのね……)
そんなことを考えていると…
「ぎぃやああああああああああああああああああ!!!!!!」
凄まじい断末魔と揺れが列車に響き渡る。
(うっ……なにが…起こったの…!?)
車両が蛇のようにのたうち回り、私は被害を最小限にとどめようと、炎の呼吸の技を次々と繰り出していく。
(あっ…だめだわ……車両が横転するっ…!)
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揺れが収まった。
鬼の気配も消えていた。
(…あの隊士たちが…首を斬ってくれたのかしら…)
私は座席に座る前に見かけた、四人の隊士たちの姿を思い出していた。
周りの乗客は無事かと見回す。
(…皆、命に別状はなさそうね……)
ほっとした私は脱出経路を確保しようと、割れた窓のふちを滑らかにし乗客たちを外に誘導した。
歩ける人は自力で。小さい子や歩けない人は、私が背負って外の安全なところまで避難させた。
傷が痛むのか、大泣きをする子供。
なにが起こったのかわからないというようにパニックになる大人たち。
(ひどいわ…)
わたしはまた、胸が痛んだ。
最後の乗客を車両の外に誘導し終わり一息ついたとき…
ドゴー――――ンッッ!!!!!!!!!!!
大きな衝撃音が辺りに響く。
(この揺れは!??)
私は無意識に刀に手を掛けた……しかし、そこで感じたものは……
強烈な、鬼の気配………
これは…斎巖やこの列車の鬼よりも、ずっと強いものだった。
思わず私は右手で自らの口を覆ってしまった。
(なぜ……今………!?)
音がした方向に踵を翻し、私は飛び行った。