第4章 我武者羅
二か月ほど前、私は鴉から昇格の報告を受け、位が庚からひとつ上がっていたのだ。
それから稔さんが、呉服屋に注文してくれていたのだろうか…
誰かが一緒に詰めてくれたのだろう、
今こうして受け取ることができた。
羽織の裾には椿の刺繍が施されていた。
(綺麗……)
羽織ってみると、その深藍の色は私の白い肌をとても美しく魅せた。
(なんて…尊い人なの……)
彼が私にくれたもの、それは筆舌に尽くしがたい。
私は亡き兄弟子を思い、羽織に顔をうずめた。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
その次の日、私は藤の花の家紋の家を発った。
それからは、鍛錬をしながら、度々任務に向かうという日々を過ごしていた。
だいぶ自らの力のコントロールができるようになってきたと感じていた頃、鴉から産屋敷邸へ向かうよう、指令が入った。
道順は都度連絡が入るようで、とりあえず私は市街地へ行くことになった。
(この服装は…少し目立つわね…)
そう思った私は、お館様に謁見するということもあり、はいからだが格式のある呉服屋で深紅のワンピースを購入した。
その場で着替え、店を出たときにまた鴉が私の肩にとまった
「!ツギハ、ムゲンレッシャにノ~レッ!」
(ムゲンレッシャ…?聞き覚えがある……)
どこで聞いたのか思い出そうと、
私は何度か "ムゲンレッシャ" と心の中で唱える。
あぁ……そうだ、私は………っ!
ーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー
ー