第4章 我武者羅
私が生まれ持っていたのであろう強靭な体と人外な体力は、あの負傷と長い休息の時間を経ても、以前と変わることはなかった。
しかし今、昨日届いた隊服と、膝上まであるロングブーツを身に着けてみて、自分がこれからどう戦っていくべきか筋道が見えた。
私が以前まで着用していた隊服は、学生服のような洋袴であったのに対し
これは…なんというか……
いつか稔さんが貸してくれた小説にでてきた、異国のドレスによく似ている気がする。
首の詰まった襟元に七分丈の袖。襟の中心から胸元にかけてボタンの装飾が施され、下半身部分の両横には太ももの部分までスリットが入っていた。
私は大胆なその隊服に一驚したが、あの長い、白色のブーツを履いてみると、なんとも丁度よく品格を残しつつ着こなすことができた。
それに、
(これ…前の隊服よりも、ずっと動きやすいわ)
生地が薄く、面積も減った分体の機動力を上げられる作りになっていたのだ。
私はこの隊服の繊細な作りと"前田さん"の意匠に感動した。
次に刀を手に取り、それを鞘から抜いた。
持ち手の方から先端にかけてじわじわと赤く染まる刀身にほっとしながら、私はこの刀が脇差しほどの長さであることに気が付く。
(…この長さなら……刀を持ちながらの、体での攻撃がしやすいわ…!)
嬉しかった。
私の体がもつ能力を、最大限に生かせる装備。
(これで、また鬼を駆れるわ…)
やる気が満ち溢れ、を奮い立たせる。
いつまでもこの家にお世話になるわけにはいかない。
荷物をまとめ、明日にでもここを発とう。
私はそう決意し、一度身に着けた装備を脱いだ。
包みを片付けようと中を覗き込んだ時、まだ何かが入っているのに気が付いた。
(何かしら…)
白い、薄い紙に包まれていたのは、深藍の羽織であった。
よく見ようとそれを広げると、ひらっと一枚の紙が落ちた
その紙には…
「 、昇進おめでとう 稔より 」