第4章 我武者羅
次に私が目を覚ましたのは、そばで物音がするのに気づいた時だった。
そこには、点滴の容器に液体を入れる若い女性がいた。
目を開いた私に、彼女は驚いたようで
ビシャッ…と
その液体を床にこぼしてしまった。
「あっ…」
私は大丈夫かと、上半身を起こした。
すると彼女はさらに驚いたようで、口を開けて固まっていた。
「せ、先生を呼んできますねっ」
そう言うと、彼女は部屋から出て行ってしまった。
ひとり残された私は、包帯でぐるぐる巻きにされている自分の姿を見て、この状況にたどり着くまでの経緯を思い出した。
横隔膜が痙攣する。
そうだ、私は稔さんと任務に出て……
稔さんは私を庇って………
「はっ…あぁ………ううぅ…」
一気に涙があふれる。
悲しすぎる。
強すぎる悲傷でじっとしていられず、私はおもむろにベッドから這い出て、外に出ようと建物内をさまよい歩いた。
体は…仰々しく手当をされているが、もうほぼ治っているのだろう。痛みは感じない。
しかし、心が、
心が、鋭い刃物で掻き壊されたように、痛いのだ
ようやく建物の出入り口が見えた。
外に出ると、まだ低い位置にある太陽が柔らかに私を照らした。
「…ふふっ……」
私は泣きながら笑った
私の撹乱した心と、外界の平和さの対比がとても皮肉だったからだ。
辺りは一面、藤の花が咲いていた。
私は重い体を引きずるように一本の藤の木にすがりついた。
綺麗に巻いてもらっていた包帯は崩れ、土で汚れ、
この時の私の姿はさぞ滑稽だっただろう。
どれくらいそうして泣いていたのか。
気が付くともう夜になっていた。
"泣き疲れる"とは、こういうことなのかとよくわかった。
(…部屋に戻ろう……)
徐に思い、静々と元居た部屋に向かっている途中で声を掛けられた。
「あのっ…!」
振り向くと、そこには先ほどの女性がいた。