第17章 駆られる ※
…そんな………
鬼の戯言だろう、その程度に思っていたのに……いや、信じていたのに……
白羅族……傭兵部族………対人の……っ…………人…殺し………
手の中の汗は冷え、肉が滑る。
体の中に、黒いドクドクした塊が駆け巡る感覚。
耐えきれず童磨から目を逸らし口元を押さえる。
「だからさぁ、俺は焦ったよ。あの天馬空を行くがごとし活躍をしていた白羅族が、鬼殺隊と手を組むって聞いた時!」
…………え…?
…鬼殺隊……手を組む………?
どういうことかと再び童磨に視線を向ける。
「白羅族の日輪刀の色はさ、炎の剣士が使う刀の赤色というか…もっとさ、深い……暗い……そう、まさに血の色。蘇芳色って言ったっけ。そんな色をしてたよ。」
「………嘘…」
ドクン…
ドクン…
「嘘じゃないよ。だって君の刀も蘇芳色じゃないか。
凝固しかけた血の色だ、君にお似合いだよ!
刀鍛冶が白羅族のために、特別な鉄をつかって打っているんだろう?」
背からの日輪刀をとり、それを鞘から抜いた童磨は自らの指先に刃を添え斬る。
その血をペロリと舐めながら、刀とを交互に見る。
「……」
…それじゃあ、鉄穴森さんは……お館様は……それを知っていて…
ーーー
ーー
ー
"この鉄は軽いのに丈夫なんですよ"
"のために作ってもらったんだ"
ーー
ー
………みんな知っていたのか
私の出自を……
知らなかったのは…私だけ……?
…なにが……鬼から人を、守りたいだ……
散々殺してきたのに…
私だって…こちら側の…っ!
「……!」
視界が反転し、覆いかぶさってきた童磨の重さで我に返る。