第17章 駆られる ※
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「ん…ぅ…」
鼻をくすぐる、お茶の良い香りで目覚めた。
柔らかな布団の上………夢…を見ていたのかと思ったが、左足首に枷がついていることに気がつき、先ほどの事は嘘ではないと再び嘔吐感に襲われた。
起き上がり体を見ると、緋色の襦袢を身にまとっていた。
その色は杏寿郎を連想させ、寝起きの霞みがかった頭を冴えさせていく。
あの鬼を…倒さなければ…。
杏寿郎さんの事を思うと力が湧いてくるよう。
やっと…想いが通じたのに…ここで死ぬわけにはいかないわ。
部屋の入口の方を見ると、お茶が二客準備されていた。
その奥には…
「…!日輪刀…」
ジャラ…
布団から飛び出たは自身の日輪刀めがけて駆ける。
足枷はこの部屋の中であれば動き回れるほどの長さの鎖がついていた。
「あれぇ、起きたの?ちゃん」
「っ…!」
もう少しだったのに…
入り口の戸からあの鬼が入ってきた。
刀には寸でのところで届かなかった。
刀を掴めたとしても、今は圧倒的に不利な状況。鬼も攻撃的ではないので下手に動かないことを選んだ。
「…ここにあったのか」
鬼はの行動を読んだのか、日輪刀をひょいと拾い自身の背に仕舞った。
その様子を見届けてから
「…あなたは?ここはどこなの?」
「そういえば、まだ名前を言ってなかったね。俺の名前は童磨。ここは俺が教祖をつとめる"万世極楽教"の客間さ。」
「……客間には見えないわ」
窓には頑丈そうな鉄格子がはめられており、扉には何重にも鍵がかけられるようになっていた。
「うん!きみ専用のね」
童磨は楽しそうにそう言い、茶器の前に座る。
「お茶には菓子が必要と思ってさ、持ってきたんだ。」
はいと懐から出した大福を前に置かれ、は座るよう促される。
童磨から視線を外さず、ゆっくり腰を落とす。
「……白羅族の話…本当なの?」
一番気になっていたことを尋ねた。
冗談であってほしい……拳の中に汗が滲んだ。
「あぁ」
"本当だよ"
童磨はなんてことないように言った。