第17章 駆られる ※
「そんなことない?本当に?…本当に覚えてないのかい?あ、もしくは白羅族の他の女に記憶消されちゃったとか?白羅族の女系にはそういう力があるんだ。」
「記憶を…」
ふと、夢に出てくる私と顔の良く似た女性が浮かんだ。
はっ、はっと胸が苦しくなり呼吸が浅くなる。
「そうだ!君も使えるはずだから、ここに、万世極楽教に来る哀れな人間のために力を貸してくれないか?」
両の腕を広げ、こちらに向いた鬼の顔は明るく輝いている。
「あー……でもだめかぁ。たしか副作用で記憶障害が起こるって、無惨様が言ってたっけ。」
「……記憶、障害?」
「そう、基本的には記憶を消すことができるんだけど、しばらくして断片的に記憶がもどったり、なにかの弾みで全て思い出してしまったりするらしい。それじゃ意味ないよね。」
"面倒ごとは嫌だし"、と鬼は続けた。
「はぁ…はぁ…」
キュと、脳みそが縛り上げられたかのような頭痛を感じ、は前かがみになる。
その顎をとられ、鬼と目が合った。
「大丈夫だよ。はこれから、俺が救ってあげるから…」
「さわっ…るな……」
ドサ…
込みあがる嘔吐感に堪え切れず、鬼の手から逃れようと顔を逸らすと、勢いのままは地面に崩れた。
「可哀想なちゃん…」
鬼の言葉は、の遠のく意識の中に響いた。