第16章 暁闇の元
「…蜜璃ちゃんも長期の任務に就くこと、あるの?」
「私は稀ね、ほとんどないわ!でも煉獄さんの場合は特殊よね、やっぱり鬼殺隊炎柱の歴史を古くから持ってらっしゃるお家だから、政府との繋がりも濃いのよね。」
「ぇ……蜜璃ちゃん、今回の煉獄さんの任務について何か知ってる?」
「あら!煉獄さん、ちゃんにも言ってなかったの?まぁ…とっても真面目な方だものね」
あら…と大きな目をさらに大きくさせる蜜璃ちゃん。
「今回は要人の護衛任務だったみたいなの。政府の…忘れちゃったんだけど、鬼殺隊ともつながりの深い高官さんの娘さんで、煉獄さんとは幼馴染の方。祝言を挙げられる日まで、危険なことがないよう煉獄さんが護衛についていたのよ。あっ、私も伊黒さんから聞いたんだけどね。」
"どんな祝言を挙げるのかしら"と蜜璃ちゃんは手を合わせうっとりしている。
…政府…高官…幼馴染……
じゃあ…あの女の子は……
「柱はね、想像よりいろんな任務につくのよ、こういうのも偶にあるの…ちゃん?」
「蜜璃ちゃん…ごめんね、私、煉獄さんのところに行かなくちゃ…!謝らなきゃ…勘違いして…っ」
わたわたと席を立ち、椅子に掛けた羽織を掴む私の姿に、蜜璃ちゃんは何かを察したようで、呆気にとられながらも"うん、うん!"と送り出してくれた。
なんて…ひどい態度をとってしまったんだろう。会いたい、会って杏寿郎さんに謝りたい…。
でも許してもらえるか…以前のような関係に戻れるだろうか不安がこみ上げる。
ひと月と少しだったけれど、何か月も経ったような懐かしさを感じる煉獄家。
息を整え玄関の戸に手をかけるがなかなか開けられない。
もし杏寿郎さんが家に居たら、まずなんて言おう。
私を見限って、素っ気なくされてしまったら、どうしよう…なんて自分勝手なことを考えていると、ガラッと戸が開いた。
「っ!!」
吃驚した…。そこにはたった今まで頭に描いていた、焦がれていた…
「杏寿郎…さん!……ぁ、あのっ…」
「…おかえり。」