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【鬼滅の刃/煉獄】真冬の夜の夢

第16章 暁闇の元









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日が西の空に沈み、空が赤く染まったころは戻ってきた。

ガラガラと開く玄関の戸の音がどこか控えめだ。



「……戻りました」


いつも通りの高く柔らかなの声。
彼女の中で、何か落ち着いたのだろうか。それとも、外に出さないよう抑えているのか。


「おかえり。風呂に入ってくるといい。」


きっと汗を流したいはずだ。
ひょこっと顔を出した彼女にそう声をかけると素直に従う。

家に誰かがいるのはいい。
ひとりの気楽さはないかもしれないが、単調な生活ではなくなる。

そんなことを考えながら、手元の日輪刀の手入れを再開した。







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「義勇さんの刀の鍔は、亀甲型なんですね。」


風呂から出てきたが隣に腰を下ろしそう言う。

刀身の手入れが終わっても、なんだか手持ち無沙汰で刀を持ったままだった。


「安定感があって、義勇さんみたい。」


「……」


無邪気に笑う。
俺の着流しに包まれしっとりと潤った体からは、石鹸の良い香りがする。

温まったからか、桃色に色づいた頬が目に入る。

縁側で倒れた時、のその頬に唇をあてたくなった。
煉獄の気配を感じていたから思いとどまることができたが、
もしあの時、煉獄が来なかったら……。



「……早く髪を乾かせ。今度こそ風邪をひくぞ。」


「はぁぃ」


はふざけているようで拗ねるように返事をし、立ち上がる。




「……煉獄のこと、好いているのか」


の足が止まる。


訊ねたくもない、聞きたくもない。
湧き上がる感情と反することを、なぜやっているのか。



を、手放したくない。

…そうだ。こんな感情を持ってしまったから、
彼女と過ごす時間が心地よいものになってしまったから。
その時間の終わりが近いのを、感覚で理解したからだ。


幸せな時がずっと続くなんて、夢物語なのだ。

わかっていた、はずなのに。





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