第16章 暁闇の元
「ひっ…!」
グルリと鬼がこちらを向いた。
その顔はぐちゃぐちゃと潰れており、不自然な穴のようなものがボコボコ空いていた。
小さな悲鳴を上げた少女は気を失ってしまったのだろうか、ぐったりとしている。
「オまエラ…俺ヲ殺しにきタノかァ…?」
「……そうよ」
ニタァと鬼の顔はとろけ、口の位置にある穴がどんどん大きくなり白い…牙?が並ぶ。
先ほどまでなかったのに不思議だ。
斬られないようにか、両腕を首に巻き付けその首を傾げる。
丸太のように太くがっしりとした足を一瞥し、は鬼に斬りかかる。
「炎の呼吸、壱ノ型…不知火!!」
ズシャ…
「ウウっ……イっでエ…」
(図体のわりに鬼も動きが早い。やはりあの足の筋肉か。)
腕を含めた首の強度がどれほどかわからなかったので、まずは鬼の両足を切断した。
すかさず次に斬りかかる首に狙いを定める。
斬り損ねないよう。正確に、慎重に。
ヒュゥゥゥゥゥ…
いつもと異なる呼吸音。
「水の呼吸…弐ノ型、水車!!!」
体を回転させ、全身の力を使い技を放つ。
ザザザザザ……
空中で身をひるがえし、地面を滑りながら着地。
やはり鬼の首は固く、少しだけ刃が痛んでしまった。
ふたつに分かれた鬼の体に近づくと、それはゆっくり崩れ始めた。
「…よく考えたな。」
冨岡さんが少女を抱えこちらに来てくれた。
戦術を、だろうか。
言葉足らずな彼の意図を想像しながら、褒められたと思いとにかく嬉しく、
"冨岡さんのご教示のおかげです"と刀を鞘にしまった。