第16章 暁闇の元
片膝をつき、ビリビリと痺れる左腕を押さえる。
「。」
落ち着いた彼の声で名前を呼ばれる。
「真剣だったらその腕は今頃切断されているだろう。」
「…っ」
「木刀だから、自分は特異体質だから問題ないと思ったのか?」
「ちが…」
違わない。その通りだ。
「…冷静になれ。でないと守れず失うことになる。」
「はい…すみません…」
戻って冷やそうといい木刀をしまう冨岡さんの後についてゆく。
腕だけではない。普段と違う動きをしたからか、体中の筋肉が悲鳴をあげている。
早く戻って休みたい。とぼとぼと俯いていると突然何かが上から降ってきた。
冨岡さんの手だった。
冨岡さんの大きな手がわたしの頭にのせられ、心地良い重さを感じた。
「初日だがよく頑張った。稽古についてこられるものは少ない。」
じわっと、涙が出そうになった。
言いようがない安心感に包まれ、心まで温まるようだった。