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【鬼滅の刃/煉獄】真冬の夜の夢

第16章 暁闇の元





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「酷いわ…」



あの後、鬼の足跡を追っていると町家の並ぶ通りに辿り着いた。
そこには既に息絶えた人が数人倒れていた。
全員、喉を掻き切られていた。


…この人達ひとりひとりに、それぞれの人生、それぞれの大切な人がいるはずだ。
人の…人生を壊す鬼が許せない…。


少し先に、遺体の肉を貪る鬼がいた。
脇差しを抜いたわたしに気がつくと、鬼は逃げ出した。


攻撃してこない…。


とうとうその鬼を塀のところまで追いつめた。



「ひっく…ひっく……」


泣いている…子供だ……
それに、わたしはこの子を知っている。

桃色地に梅の花の柄の着物。

あの時、杏寿郎さんと一緒にわたしが初めて煉獄家へ行った時、道中で出会った女の子だ。
…可愛い着物。この子の両親が、この子のために選んだものだろう。

あの時の光景が浮かんで消える。

…あぁ、あの時が懐かしい…。
あの日に戻って、やり直したい。
杏寿郎さんのことを師範としてのまま、お慕いできていたら…
こんな気持ちにならなくて済んだのに…。



…時間は不可逆。
彼のことをまっすぐ思っていたあの頃にはもう戻れない。


子供の鬼に向き直る。

…なんでもそうだ。幸せな時なんてすぐに壊れる。


「やめて……殺さないで…」


「っ…」


……人殺し…は、どっちなのだろう。





ザッ…ズシュッ…


振った脇差しは空振った。
油断していた。


その鬼はすばしこく、飛びかかってきた。


「くっ…」

切れたのは、わたしの肉の方だった。

避けきれずぱっくりと割れた右頬から血が流れる。

まずい…逃げられてしまう…!

焦って振り返ると…


「水の呼吸…壱ノ型、水面斬り」


「…!」


そこには水柱の冨岡さんと、崩れ落ちる鬼の体があった。


「…ぁ…あなたは…」
「なぜあんな子鬼に手間取った。」

彼はわたしの言葉を遮り鬼を見つめたまま言った。
怒っているようだ。

確かに…わたしは鬼を斬ることに集中できていなかった。
自分でも自覚がある。
柱に稽古をつけてもらっているのに今の様は情けない。


「煉獄のところの…」

冨岡さんは今わたしの事を思い出したようで、ようやっと目を合わせてくれた。






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