第3章 尊い人
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稔さんに彼の師匠でもある、炎の呼吸の育手を紹介してもらい、その後私は4か月で、藤重山で行われた最終選別を奇跡的に突破することができた。
本当に奇跡だったのだ。
鍛錬を始めてからたったの4か月で最終選別を突破したことは、とても凄いことらしい。
しかし、私はどうしても刀の扱いが上手くできず、まず接近法で鬼を素手および蹴りで攻撃し、ひるんだところに刃をいれる。
…という、かなり無理矢理な戦い方をしていたのだ。
これでも鬼の首を斬れなくはない。
しかもこの戦闘方法は、直線的に突進しながら放つ技や、足を止めた状態で斬撃を繰り出すという特徴をもつ炎の呼吸と相性が良いのだ。
しかし、もっと巨体で強い鬼や、異能の力をもつ鬼の首を斬るには難しいだろう。
(もっと…精進しなくては……)
最終選別突破後、刀鍛冶に打ってもらった刀の到着を育手の家で待ちながら思った。
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それからは早かった。
その約一週間後に刀が届き、私は世話になった育手の元を後にし、任務をこなすようになった。
私はとある任務を終え、茶屋でお茶をしていた。
私の鎹鴉が肩にとまった。
足に手紙を括りつけられている。
そっと手紙をほどいて開いてみると、先日最終選別を突破したことを報告した手紙に対しての、稔さんからの返事のようだ。
文面にはもっぱら、お祝いの言葉が並んでいた。
兄弟子の健在な様子を想像して、私は思わず頬が緩んだ。
また、文末には私の無謀な戦い方を案じてか、近々剣を見てあげようという、有難いお言葉も書かれていた。
私は、とにかく道を拓いてくれた兄弟子に、直接会ってお礼を言いたい。そう心を逸らせながら、返事の手紙に筆を走らせ、鴉の足に括りつけた。