第16章 暁闇の元
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さらさらと柳の枝が揺れる。
この街の中心である広い目抜き通り。立ち並ぶ店はどこも高級そうで荘厳としている。
隣町で鬼が出たと鴉から伝令がありここに来た。
街には華族が多く住んでいるためこんなにも栄えているのだ。
歩く人の格好も上等だ。私も背筋が伸びる。
鬼の情報を集めるため聞き込みをしているが、手掛かりが少ない。この近辺ではないのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
人いきれしたところで甘味処に入る。一度落ち着いて任務の計画を立てたい。
じりじりと太陽の眩しかった外から屋内に入りほっとする。光のコントラストで一瞬めまいがした。
持ってきてもらった大きめのグラスに入った緑茶はすぐになくなった。
冷たい液体が体に染み込んでいくのを感じる。
懐からあの帯留めをだして見つめる。
杏寿郎さんにもらった日からずっと、お守りとして持ち歩いているのだ。
…会いたい
無意識に心の底から出てきた気持ちだった。
どうして会いたいのか、それは彼はわたしの師範で、師範のいない日常は寂しいからだ。ずっと一緒にいたから…。
…そうに違いない。
考えるほど杏寿郎さんが恋しくなってしまう。
…任務に戻ろう。
帯留めをしまい、甘味処を後にした。