第15章 ゆくりなくも
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「の様子は…どうかな?」
ここは胡蝶の部屋。
部屋には俺と胡蝶と、そしてお館様がいる。
胡蝶の指示で、彼女と一緒にを病室に運んでから"お館様がいらっしゃっている"と聞かされた。
お館様はちょうど胡蝶に用事があって来ていたそうだ。
「家族のことを話題に出すなどしているのですが、自身はやはり記憶を無くしたままのようです。夜、街に連れ出した時も、鬼の動きには特に変わった様子はありませんでした。」
「そうか…」
「先日、さんは鬼に襲われたとか…?まだ完治はしていないようですね。」
「あぁ…。…その件ですが、を襲った鬼も含め、彼女の血を舐めた鬼は総じてその味を絶賛していたとのことです。」
「うん」
「やはり、特殊体質所以なのでしょうか」
「そうだね、……気分のいい話ではないけれど、白羅族の肉体は鬼の体を強化するらしい…。血液も、鬼にとってはどんな美酒にも勝るもののようだけど、その本質は肉にあるみたいだ。」
「………っ」
「……その価値は稀血の肉体をも超える…。だから過去、鬼舞辻が血眼になって彼らを……」
ごくりと、杏寿郎としのぶが喉を鳴らす。
「……だから…私はね、これを好機と見ているんだよ……」