第15章 ゆくりなくも
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たくさん歩いて、そろそろ休憩がしたくなった私たちはカフェーを探す。
ちょうどお茶の時間ということもありどこも混んでいた。
「、君はここで待っていてくれ。」
向こうの店を見てくると言って、
杏寿郎さんは空き具合を見に行ってしまった。
…しかし……彼はなかなか戻ってこない。
……不安…
ひとりになる心細さからか、少し熱も上がってきたようで立っているのが辛くなってくる。
加えて暑さと人混みにも酔いそうで、
涼しそうな日陰の路地に入りしゃがみ込む。
ゆっくり、帽子のつばで顔を仰いでいると…
「かわいい帽子だね。君、ひとり?」
「え?」
男の人が話しかけてきた。
その後ろにもう二人いる。
「ひとりなら俺らと遊ばない?」
「向こうに楽しいところがあるんだ。ほらっ」
腕をとられ立ち上がらされる。
頭の中で、危険だ と、誰かが言っている。
"行きません"と言って、腕を振りほどかなくちゃ…
……でもめまいがして…
とても3人を相手にできる状況じゃ……
ヒュン…
「うぉ゛っ…くっ」
「っ、杏寿郎さん!」
瞬く間に表れた杏寿郎さん。
彼に腕をひねり上げられた男がすごく痛そうな顔をしたので、思わず責めるように叫んでしまった。
杏寿郎さんは すっと 掴んでいた男の腕を離し、私を背中に隠すように立ちなおす。
「なんなんだよおめぇ!」
男が杏寿郎さんに殴りかかる。
一般人の拳など恐れるものではないが、もし彼に当たってしまったらと思い、私は半身を乗り出した。
パチッ…
「やめてくれないだろうか、この人は俺の大事な人だ。」
「………っ!」
杞憂に過ぎなかった。
彼は男の拳を華麗に止め、静かにそう言った。
「はぁっ?!」
男は自分の立場が格好悪いと思ったのか、逆上する。
…が、次第に表情が険しくなっていった。
「あ、兄貴ぃ」
あぁ、そういうことかと、
杏寿郎さんが男の拳を強く握っているから痛がっているようだ。
「………ちっ…」
しばらくの攻防の後、杏寿郎さんがやっと男の拳を離した。
「…おい、…おめぇら行くぞ」
「……なら、ひとりにさせんなよ」
去り際男と目が合った。男は視線を杏寿郎さんに移してそう台詞を吐いていった。