第15章 ゆくりなくも
宝飾店が立ち並ぶ通りに入った。
密着している部分から、彼女の心が浮足立っているのが伝わる。
に視線を向けてから、俺も辺りに目を向ける。
雪を欺くその肌と顔立ちに、女子でさえも顔を赤くしていた。
本人は気づいているのかいないのか、周りの商店を見てはしゃいでいる。
「あっ見て杏寿郎さん!…ん…杏寿郎さんが見えない…」
の目を惹いた店があったようで俺の方を見上げるが、帽子のつばが邪魔をして見られない。
「よし…と、見えた!」
「…っ」
彼女は腕を離し、両手でつばを少し折り曲げて互いが見えるようにした。
…また腕が離れてしまったことに、少しの喪失感。
あたたかだった左腕からは熱が引いてゆく。
でもそれよりも今は…
のその仕草が愛らしくて…。
今のは…今のは可愛かった…。
気づかれないよう静かに、緩む口元を手で隠す。
店の奥に進んでいく彼女が次に振り向く時までに
顔を戻せるよう尽力しよう。
…いつからだろう。
彼女から発光しているかのように
を囲む輪郭が明るく見えるようになったのは。
眩しいけれどそれは太陽のようではなく、月のように玲瓏な明るさで儚い。
目を離したらどこかに消えてしまうんじゃないか。
そう彼女は思わせてくる。