第15章 ゆくりなくも
「じゃぁ、行ってきますね」
「土産を買ってくるからな」
千寿郎くんが用意してくれたお昼ご飯を食べてから私たちは家を出た。
千寿郎くんも誘ったのだけれど、午後は習い事があるとのことで一緒には行けなかった。
「まぁ、参道がこんなに広い。」
最初に向かった場所は神社だった。
杏寿郎と千寿郎がのために参拝した神社に、お礼参りに来たのだ。
参道の両脇には大木がのびのびと生えていて、青々とした葉がたおやかに揺れる。
煉獄家からそう遠くもない場所に、こんな場所があったなんて信じられない。
息が上がらないようにゆっくりと歩く私の歩幅に、杏寿郎さんが合わせてくれているのを感じ、心が温かくなった。
パン、パン、
二礼・二拍手・一礼。
二人の、乾いた音。
他の参拝者はおらず、響かない。
目を開け隣の杏寿郎さんの方に顔を向けると目が合った。
目が合う寸前、彼はぼんやりと私を見ていたような気がした。
なんだろう、杏寿郎さんは何を考えているのかわからなくて
緊張から鼓動が早くなる。
「少し待っていてくれるか?」
そう言い残した杏寿郎さんは社務所の方へ行ってしまった。
*
見とれていた――――
目を伏せ手を合わせるに。
いや、本当はもっと前からそうだったんじゃないかと思う。
今日、自室でに呼ばれ振り返り、
その先にいた紺碧の洋服を纏った彼女はとても美しかった。
思ったことはすぐに言う性格だが、感情が理性を超えたんだと思う。彼女を形容するにふさわしい言葉がわからなかった。
美しい、綺麗、可愛い、可憐…
全てが浮かんだが、どれもこの彼女の前には安っぽく聞こえてしまう。
そして結局、
"お洒落だな"
なんてことしか伝えられなかった。