第15章 ゆくりなくも
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カラコロ…と、手の中で七色白粉が入った小瓶を転がす。
「ふぅ…」
鏡台の前に座ったは息をつき、小瓶を開けた。
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「杏寿郎さん」
開け放された襖から少しだけ顔を出し、机に向かい書き物をしている彼に声をかける。
「む?か、もう歩いても平気なのか?」
「うん、あの…よかったら今日お出かけしませんか…?」
はそう言いながら襖の陰から出て杏寿郎に近づく。
「……ぁ…」
杏寿郎から似つかない間抜けた声が出てのでは首を傾げる。
「……っ、あ、あぁ、もちろんだ!今日は天気もいいしな。して、後ろに隠しているそれは何だろうか?」
「ふふっ、じゃん!」
は後ろ手にもっていたつばの大きな帽子を前に掲げた。
それは先日、蜜璃としのぶに進められて買ったものだ。
もちろん今日はあの紺碧のワンピースを着ている。
杏寿郎さんと出かけようと思ったから、今日おろした。
あの七色白粉も今日初めて使った。
…さっき杏寿郎さんに声をかけた時、彼は動揺しているように見えたけど…
ちょっとお化粧が濃すぎたかしら…
反応に一瞬詰まっていた杏寿郎。
顔色の悪さをごまかすために、いつもよりしっかり目に化粧をしたことが裏目に出てしまったかとは心配になる。
本当はまだ調子が良くなったわけではない。
ただ、煉獄家の皆に心配をかけたくなくて、
あんまり長く伏して負担をかけたくなかったから、杏寿郎が非番の今日出かける提案をしたのだ。
「番傘があるけど、洋服を着る時はこっちの方がかわいいって、蜜璃ちゃんとしのぶちゃんが言ってくれて…。」
杏寿郎の大きな瞳でまじまじと見つめられ緊張し、のその声はだんだんと小さくなり、恥ずかしくなってそのまま帽子をかぶる。
「今日はいつにもましてお洒落だな!」
「きょ…ふふっありがとう」
"杏寿郎さんとのお出かけだから"
という言葉が口から出かけ、慌てて止めた。