第14章 琴線に触れる
「えぇ…。…兄上、"白羅族"というのは、一体なんなのでしょう…。あの時、さんは鬼の毒を受け、すでにあれほどの怪我を負っていました。それなのに…急に…覚醒したようになって…。それまで圧倒的に優勢だった鬼がさんの前でまるで赤子のようになっていました。」
当時を思い出しているのだろう。
千寿郎の顔には、恐怖の色が見えた。
「…それに…その時のさん…どこかいつもと違っていて…。少し、怖いと思ってしまいました…。」
「……。」
「俺が…もっと、強ければ…。さんに怪我をさせないですんだかもしれないのに…。」
「あまり自分を責めるな。千寿郎。今回はふたりが家に帰ってこられた。それだけで十分だ。」
俺は千寿郎の頭に ぽん と手をのせた。
ーーーーーーーーー
その日の夜
今日も俺は、の療養している部屋の隣の部屋で眠ることにした。
千寿郎が代わると言ってくれたが、日ごろから家のことをやってくれている千寿郎には夜は休んで欲しかったので、大丈夫だと伝えた。
それに俺は四六時中全集中の呼吸をしているから、寝ていても異変があればすぐに起きることができる。
だから、今日も俺が彼女を見守るのだ。
ーーーー
「……ん…うぅ…」
布団に入ろうとしたとき、のいる部屋から彼女の苦しそうな声が聞こえた。
目が覚めたのかもしれないと思い、静かに隣の部屋の襖を開けて中に入る。