第3章 尊い人
なぜの話を聞いて、稔が驚かなかったのか。
それは、稔の父親が大学の教授で、民族学を研究していたからである。
「そうか…きっと君は、そういった体質をもつ種族なんだろうね……。うん…、でもとにかくこれで顔の汚れを拭うといい!ところで君は、どうしてこんな遅くに出歩いていたんだ?」
稔は立ち上がりながらそう言い、今度は落ちている、鬼が抱えていた子供の頭部のほうへ歩いて行った。
「えっと…私は市街地の方へ行こうとしていて………あの、あなたは何をされている人なのですか?鬼って……それにその子は……?」
聞きたいことが山ほどある。
「グウ~~~~~~~~」
またもや盛大にのお腹が鳴った。
稔は目を見開いて息絶えていた"その子"の目を閉じてあげてから両手を合わせていた。
こちらに振り返ると、
「ははっおなかが空いているんだね、これも何かの縁かもしれない。この少し先にうどん屋があったから、よかったらそこで話をしようじゃないか」
「…は、はい!」
「でも先に、この子を埋葬してあげたいんだ…いいかな?」
「…もちろんです……お手伝いいたします…」
は立ち上がり、稔の方に駆け寄った。
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殺されてしまった可哀想な子の埋葬が終わってから、私たちはうどん屋の暖簾をくぐった。