第3章 尊い人
「大丈夫ですかっ!?」
鬼の首を斬った人が、に駆け寄る。年のころは18、19くらいだろうか。
落ち着いた顔立ちをしているが、快活な立ち振る舞い、話し方をする青年だった…
「えぇ…私は大丈夫です……」
は身を起こし、乱れてしまった着物を直しながら返事をした。
「…怪我をしているではありませんか!これで押さえて!」
その人はが首元に負った傷を見てはそう言い、懐からガーゼを取り出し手渡した。
「こんな傷、数時間で治って痕も残りませんから……」
「えっ…?」
彼は驚いたようだった。
それもそうだ、彼はの言動に違和感を抱いたからだ。
一方、は先刻の鬼と乱闘になった際、自分の体のことを少し思い出したのだ。
彼を心配させぬよう、はゆっくり説明した。
日の光に弱く、それを長時間浴び続けていると皮膚が爛れる、および体力を消耗すること。
高い戦闘能力、怪我からの回復の尋常でない速さをもっていること。
いずれも、普通の人間とは思えないことであったが、
青年は彼特有の穏やかな雰囲気をもつ笑顔でを見つめ、話しを聞き入れてくれた。
これがと 稔 の出会いであった。