第14章 琴線に触れる
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「ふっ、は!!」
「ははっいいぞ、!そのまま、そうだ、もう一回!」
目の前の少年めがけて飛び上がり、廻し蹴りをする。
真剣に挑んだはずだが、彼の腕は難なくそれを受け流した。
「もう!倫也兄さま、少しはやられてくれてもいいんじゃない?」
「俺は兄だからな、妹にそんな姿は見せられないな!」
悔しくてぷーっと膨れる。
「倫也、、おにぎりを握ったわよ。」
おかあさまだ。
私たちは はーい!と返事をし、母のいる縁側まで走った。
せめてここでは負けたくないと、私は兄よりも先におにぎりに飛びついた。
「ふふっ、ゆっくり食べなさい、まだあるんだから」
母は私の頭をなでて微笑む。
わたしも、はぃ と、大好きなおかあさまに笑顔を向けた。
私が…私たちがいつも鍛錬をしていた場所は
一日中日が当たらないように、コの字型に建てられた家に囲まれるよう、北側に作られた広い庭だった。
元々、父は兄にだけ稽古をつけていたけれど、
ある日突然、私の稽古を見てくれるようになったのだ。
それは、たぶんあの出来事がきっかけとなっているのではないかと、私は思っている。
数年前…、私が知らぬ男に誘拐された日。
おとうさまとおかあさまは警察よりも早く私を助けに来てくれた。
ふたりの顔を見て安心した私は、その時気を失ってしまったらしい。
目覚めたときはすでに家の布団にいた。
でも…、家に帰る途中、
いっときだけ目が覚めた私は、おとうさまの背でふたりの会話を聞いてしまった。
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