第14章 琴線に触れる
ーーーーー
「うっ…ぐ、ぁ゛…」
…体が、勝手に動く。
"この子たちを助けたい"という感情と、もうひとつ。
"この男を殺したい"
…という、心の中にあることを否定できない
この怖ろしい欲求に体は忠実に従う。
これまで人なんて殴ったこともなかったのに、わたしの体はその方法を知っているように難なく急所をあてる。
追いやられ、男の背中が壁にあたる。
「…くっ、くそ…!この餓鬼…!」
どこに隠していたのか、男はなたを取り出しわたしに振りかざした。
はじこうと咄嗟に腕を出したが、想像した衝撃は来ず
代わりに顔に生暖かいものがかかる。
「……!」
見ると男の首から血が噴き出していた。
何が起こったのか、わたしは一歩後ろに下がったその時、
「"虎豹の駒は食牛の気あり"って言うけど…まさにこのことだねぇ」
外からまた別の男が入ってきた。
「ど、童磨、様!!…ガッ…はっ…」
男が苦しそうに首を押さえ、今入ってきた"童磨”という男に膝をつき頭を下げる。
「君は運がわるかったね。一匹 虎の子が混じっていたみたいだ。」
「くっ…かはっ……」
男の首から流れる血が止まらない。
「あぁ、ごめんごめん、浅く切ったからくるしいよね。」
「!?」
「おれのためにたくさんおんなの子を持ってきてくれてありがとう。君はきっと"天国"にいけるよ。」
ズシャッ……ゴ、ン…
見え、なかった。
"童磨"と呼ばれた男が…あの男の首をはねたのだろうか…
目の前には男の胴体が倒れている。
(血が…たくさん……人間の…血……)
「はっ…はっ…」
「びっくりさせちゃってごめんねぇ」
真っ白な長い髪の男…童磨がゆったりとした足取りでこちらに近づいてくる。
この男は危険だ。
そう思うのに、体が少しも動かない。
それよりも、どうしてか私は血の…匂いに高揚して…気分が今……
とても良い。