第14章 琴線に触れる
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「…槇寿郎殿、わしの勘違いだったら、聞かなかったことにしてほしいのじゃが…」
鎮静剤を打たれ、布団の上で静かに眠る。
その向こうに座る橘殿が、聴診器を首に掛けなおしながらそう切り出す。
「この子はもしや…白羅族では?」
「…もっとも、そうであるな、杏寿郎。」
「!?…はい。お館様によると、はその白羅族の末裔とのこと。…橘殿はその種族をご存知でいらっしゃるのか?」
父上が、が白羅族ということを承知の上、これまで黙ってくれていたことに俺は一驚を喫した。
「えぇ、えぇ…私の先代の時代、今ではその名前を口にするのも禁忌となっているのじゃが、当時その種族の鬼殺隊士は英雄のようなもんじゃったそうじゃ…。かくいうわしも、小さな頃この人らに命を救ってもらったんよ…」
そう言い、目を細めてに両手を合わせる橘殿。
「俺の祖父上も…同じことを仰っていたんだ。祖父上が柱を務めていた頃、白羅族の隊士もたくさんいたそうでな、今のお前と同じように何人か継子も育てていて、大いに交流があったそうだ。」
「それは…初耳でした…。」
俺と千寿郎を交互に見る父上の顔は、なんだかいつもより優しかった。
「うむ…。ご存じの通り、白羅族は肉体負傷からの異常な速さの回復ができる体質であるが…毒には弱いのじゃ…。普通の人間よりもはるかに。」
隣りで息をのむ千寿郎の気配を感じた。
「じゃからこうして、人によってはショック反応を起こしてしまう。この子にとっては、日光以上の弱点と言えよう。かわいそうに…」
彼の視線を追うように、俺も、時折苦しそうに眉間にしわを寄せるを見た。
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