第2章 逢魔が時
「あぁ?…クックッ…そうだぜぇ、俺が殺したんだ。夜なのに一人で外をうろついてたからよぉ…
コイツの断末魔はぁ最高だったぜぇ…泣きわめきながらずっと母親を呼んでてよォ……子供は小せぇがうめぇからなぁ……骨まで残さず食べてやったぜぇ……」
先ほどちぎったはずの右腕が、ゆっくり再生してゆく……
彼の言葉を聞きながら、吐きそうになるのを必死にこらえた。
「あなたは……人じゃないわね…?」
「あぁん?俺は鬼だぁ…。……おめぇ、鬼狩りじゃねぇのかよ」
「おにがり…?」
"鬼狩り" なんて言葉、知らない。
というか、もういい、どうでもいい。
ただ私はこの、意味の分からないことをのたまうこいつを
殺してやりたい。
また、思考より先に、体が勝手に動いていた
次の瞬間には、私の右手は手刀のように鬼の顔面に突き刺さっていた。
「グオッ………」
一瞬、鬼の力が抜ける。
(やった…かしら……)
急所と思われるところに一撃を食らわせ、私は手を引き抜いた。
………が、鬼はぐちゃぐちゃになった顔についている目玉をぐるぐるさせ、両手で私の首を持ち上げた。
「かっ…はっ……」
(苦しい…!)
「ふっヒヒ、やっぱぁお前、鬼狩りじゃねぇんだな!刀もってねぇしな!!!鬼はなぁ!鬼狩りの刀で首を切らねぇとだめなんだよ阿保が!!!」
鬼の手に力が入っていく。
「うっ…ふっ……は、」
(まずい…!力が…出ないわ……)
が意識を飛ばしそうになった時…
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!」
ザシュ……!
の体は、地面に吸い寄せられるように、唐突に支えを失い崩れ落ちた。
(な…に……?)
がぼやける視界に見たものは、
地面に転がる鬼の首と、刀を鞘にしまう一人の剣士だった。