第14章 琴線に触れる
「くっ…!」
あんなにも高いところから落ちたはずなのに、衝撃だけで痛みは感じなかった。
さんが、庇ってくれたのだろう
立ち上がったさんは自分の右脇に俺を抱き、頭を包むように手を添えてくれていた。
…少し先に鬼がいる
彼女は俺に鬼を見せないようにしているのか、ここからだとそれの足元しか見ることができない。
どうする、どうする…
鼓動がうるさすぎて何も考えられない。
「…おい女。お前の血はなんだ、うめぇうめぇうめぇえなぁあおい!」
(血!?血ってなんだ?さんは怪我をしているのか!?)
鬼の言葉に動揺した俺は、自分の頭に乗っている彼女の腕を少しずらし、鬼を見た。
じゅるり、と音を立て笑いながら、奴の長い爪に付着した赤い液体を舐めとっていた。
すぐに目線を彼女にうつすと、その背中はあの鬼に斬られたのだろう、斜めにぱっくりと割れ、血が染みだしていた。
「、さん…!」
「私は大丈夫、千寿郎くん。大丈夫だから、落ち着いて。」
彼女のこんな低い声は初めて聞いた。
この状況でどうして落ち着けるのだろうか。
息をするのも忘れていたら、鬼がまたしゃべりだした。