第13章 【番外編】碇草 ※
は杏寿郎に組み敷かれていたのだ。
開いた足を閉じようにも、杏寿郎がいて叶わない。
「…君は…」
何処からか漏れる月明かりが、彼の顔にあたる。
その緋色の瞳はどこか色気を含んでいて…
「いけない子だな」
いつもの杏寿郎ではなかった。
そばに落ちているの帯を手に取る杏寿郎。
「き、杏寿郎さん…違うの…あの、け、血鬼術で…」
「…ほう、血鬼術で、なんだ?」
「…っ」
「君がこうして夜這いをする子だったとは…」
杏寿郎はの両手首を頭の上で組み、その帯で縛りながらそう言う。
そのまま杏寿郎の手はの二の腕をすべり、浴衣の袷をつとなぞる。
腹のあたりで手を止め、もはや意味をなしていない布をいじらしいくらいにゆっくりどかす。
「ゃだっ…やめ、て…」
無防備な女体があらわになる。
「…すごく綺麗だ…」
まじまじとの体を見つめた後、
杏寿郎は三本の指で鳩尾から下腹部にかけてを優しく撫でた。
それだけで自然に腰が浮き、杏寿郎の声で名前を呼ばれるたび体が疼いた。
「きょ…じゅろ、さん…ぁんっ…」
優しく、優しく
普段の豪快な彼からは想像もつかないくらいの優しい手つきで、の膝から腿、そして内腿からまた足先に向かって撫でてゆく。
もっと、もっと…と、体がより強い快感を求める。
でも…
「やめ…て、くだ…さい…」
血鬼術で敏感になった体。
やっぱり、このまま欲に負けてはだめだと
わずかに残った理性でそう訴える。
縛られた両手を顔の前にもってきて、生理的に出てきた涙を隠す。
手を止めた杏寿郎が今どんな顔をしているのかわからない。
「……ごめ、んなさっ」
"ごめんなさい" と言い終わる前に、唇を指で押さえられた。
両手もまた頭上に戻されてしまった。
固く閉じていた瞼をゆっくりと開けると、そこには少しだけ悲しい顔をした杏寿郎がいた。