第12章 寡黙な人
「ふふっ、どうしたの?そんなに見つめられたら、穴が開きそうだわ」
口元を手で隠し、もじもじと恥ずかしそうにしている蜜璃ちゃんを一瞥してから、しのぶちゃんが口を開いてくれた。
「では…甘露寺さんが聞かれないのであれば、私が聞いてしまいますね。…さん、ずばり、煉獄さんのこと、どう思ってるんですか?」
コトンッ…
意想外なことを聞かれて、手元から白粉の瓶がすべってしまった。
…杏寿郎さんのこと……どう、思ってるか、なんて……
返答に困っていたら、ちょうど頼んでいたクリームソーダが運ばれてきた。
わずかにできた猶予で、考える。
「…師として、すごく尊敬しているわ。まっすぐで、底抜けに明るくて…太陽みたい」
お給仕の女性を見送ってから、そう答えた。
「ん~それだけですか?他には?」
まだ納得してくれないしのぶちゃんは、なぜか期待のこもった目を向けてくる。
「え?ほかには…」
いつも思っていることを、いざ言葉にしようと思うとなかなか出てこない。
口ごもってしまった私にしびれを切らしたのか、しのぶちゃんは
"甘露寺さんっ"
と言って、蜜璃ちゃんの方を向いた。
"えぇ~…" と、なにか言いたいことがあるようで恥ずかしそうにしている彼女だったが、
しのぶちゃんに小突かれようやく口を開いてくれた。
「あのね、ちゃん、わたし…」