第12章 寡黙な人
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カフェーの席に着き、注文を済ませた私たちは
先ほど三人でお揃いで購入した白粉、"七色粉白粉"を袋から出し眺める。
小瓶の中には色とりどりの粉が、それぞれ玉になってたくさん入っている。
その可愛らしさに私たちは目を輝かせていた。
(…店員さんは、白、黄、肉黄、牡丹、紫、緑、ばら色…って、言っていたかしら…)
カフェーの内装や家具は飴色に統一されており、
どこか重厚な雰囲気だった。
側の窓には雉が2羽、並んで水辺を飛んでいる画のステンドグラスがはめられていた。
…白、水色…青と…少しの赤…。
そのガラスを通った光が手元の小瓶に届く。
ゆっくり小瓶を回すと、中の玉に反射した光がその中で漂う。
(海…のよう…。)
" 海 "
一度だけ、見たことがある。
稔さんを失ってから、ひとりで行動していた時
鬼の足跡を追っていて、ある岬に着いたのだ。
…深い、深い青色の海。
夕日が反射し、波がきらきらと輝いていた。
美しくて見とれたのを覚えている。
青色…
あの人…冨岡さんの瞳…
群青色というよりサファイアのようで、吸い込まれそうな感覚があった。
切れ長で涼やかな目元、端正な顔立ち…
まだ胸がどきどきとしている。
(…昔 冨岡さんとどこかで会った気が…)
するようで…しないようで…
水柱ともあろう人に会ったことがあるなら、忘れないはずだ。
きっと思い違いだろうと心を落ち着かせ、それまで手元の白粉に向けていた視線を上げる。
すると蜜璃ちゃんとしのぶちゃん、ふたりの視線とぶつかった。
見つめられていたようで、全然気がつかなかった。