第12章 寡黙な人
優しい日差しが足元を照らす。
もう梅雨もあけたのだろうか、今日は晴れやかな晴天だった。
私も番傘を差さずに青空の下を歩けたらなと、
柄を握りなおしてから隣を歩く可憐な女の子たちの方を向く。
「あ~ん、やっぱりあん蜜といったら松月亭さんよね!本当においしかったわ~」
「ほんとですね。私も久しぶりにあそこのあん蜜を食べられて良かったです」
今日はずっと前から楽しみにしていた、蜜璃ちゃんとしのぶちゃんとのおでかけの日。
街のカフェーでお茶をして、これから通りのお店を見に行くところなのだ。
蜜璃ちゃんは今日は非番ということで、淡紅色のツーピース、しのぶちゃんと私は夕方から研究、任務とそれぞれ用事があるので隊服を着ている。
「蜜璃ちゃんはいつもそんなにかわいい洋服を着ているの?」
彼女とツーピースがあんまりにも似合っていたので聞いてみた。
「えっ!かわいいなんて…嬉しいわ!最近、洋服が安価で手に入るようになってきたでしょ?だからつい買っちゃうのよ~」
そう言い両手で口元を隠す彼女はやっぱり可愛かった。
「でもでも、しのぶちゃんもこの間ワンピース着てたわよねっ!ちゃん見たことあるかしら」
「ううん、ないわ。お洋服姿のしのぶちゃん、会いたかったわぁ」
「ふふっ、さんまで。案外、着てみると着物よりずっと楽なんですよね」
「ちゃんは、普段どんなお洋服着るのかしら?」
蜜璃ちゃんにそう聞かれ、私はふと、無限列車に乗る前に買ったワンピースを思い出した。
…あれは、車内に置いたまま取りに戻らなかったのよね……
もうきっと、探しても見つからないだろう。
「…私、洋服は持ってないの。普段は隊服で、着物は一揃え、杏寿郎さんが贈ってくださったからそれを着てるの」
"杏寿郎さん"と言った時に、ふたりが互いに目くばせをしたのを見てしまった。なにか、まずかっただろうか。
でも、
「あら!そうなの?そしたら今日はちゃんのお洋服を見ない?」
「いいですね!そうしましょ、さんは絶対洋服が似合いますから、選びがいがありますね。」
なんて、ふたりが言ってくれたから、
気にしないことにする。