第11章 仲間
「は何を祈った?」
「私は…鬼を滅して悲しむ人をなくすこと、それと…」
「それと?」
「…こういう、杏寿郎さんとの穏やかで幸せな時間が、…できるだけ長くありますように…って…祈った…。」
「よもや…」
よもや、よもや、が何やら可愛いことを言って俯いてしまった…。
「すまない、最後の部分が聞こえなかったのでもう一度言ってくれるか?」
少しからかいたくなった。
「…っ!言いません!なんでもない!」
赤らんだ頬をふくらませ、ぷいっと前を向いてスタスタと歩いて行ってしまった。
*
素直に、流れ星に祈ったことを杏寿郎さんに伝えたのだが、
声に出すと思った以上に現実味が増し、なんだかものすごく恥ずかしいことを言ってしまったようだ。
羞恥で強張る顔を彼に見られたくなくて、杏寿郎さんよりも先を歩く。
少し後ろから、「、待ってくれ」なんて、
杏寿郎さんだったら私の歩幅なんてすぐに追いつけるだろうに、わざとゆっくりついてきてくれているのだ。
あんまり拗ねているのも良くないだろう。私は適当なタイミングで懐から小包を取り出し、彼に差し出した。
「これ…。良かったらもらってくれませんか?」
「む?これは?」
「開けてみて」
それは、猫の形をした根付だった。
「根付だ…、いつの間に?」
驚いた顔をする杏寿郎さん。
それもそうだろう、これは牛鍋屋で「お手洗いに行く」と嘘をついて
大急ぎで買いに行ったものだったから。
「さっきのお店でこれを見かけた時、この猫、杏寿郎さんの側にいたらかわいいなぁって思ったの。だから…」
「………」
「あの…っ、杏寿郎さん?」
彼は手の中の根付を見つめたまま動かない。
「杏寿郎…「そうか!がそんなことを思っていてくれていたとは、とても嬉しい!!俺もこの猫をお守りとして、肌身離さず持っていよう」
もう一度声をかけたところで、ものすごい大きな返事が返ってきたので吃驚してしまった。
でも…
「嬉しい…」
ほろっと、心の声が漏れた。
いつか思い出になるであろうこの一時一時を大切にしたいと、心から思った。