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【鬼滅の刃/煉獄】真冬の夜の夢

第11章 仲間






牛鍋屋で夕食をすませ、俺たちはやっと家路についた。

街の賑やかさを背中で聞きながら、西へ進む。
街灯はだんだんと少なくなり、辺りの闇も濃くなってきた。

住宅街を抜けたのか、少し開けた場所にでた。
近くで小川の流れる音が聞こえる。


「む」
「あ」

ふたりの声も、ふたりが足を止めるのも、ほとんど同時だった。

ふと目の前を横切った、黄緑の柔らかな光。

もうそんな季節かと今しがた尾を引いた蛍を目で追ったが、その先は闇のままだった。


「ん…杏寿郎さん」


に呼ばれ振り向くと、彼女はいつのまにか腰を下ろし、その手の甲には一匹の蛍がとまっていた。

蛍は一生懸命に体を点灯させていた。
儚い光が侘しさを誘う。


「の手は、何かうまい香りがするのかもな」

「ふふっ牛鍋の匂いにつられたのかもしれないわね」

彼女はそう笑うが、実際からはいつも、独特な良い香りがしていた。

どこかで嗅いだ覚えのある香りなのだが…よく思い出せない。


「あっ」

俺も腰を下ろし蛍をよく見ようとしたが、それはついと空に向かって飛んでいってしまった。

静かに立ち上がる。

蛍の光が見えなくなるまで、ふたりとも黙っていた。

今宵は新月の、真っ暗な晩だった。

空一面に広がる星々を見て、ため息が重なった。

それが面白くて、お互い笑いあった後
もう一度星を見上げた。




「あっ!」
「むっ!」



つーっと、流れ星が流れた。


「見た?今、流れ星!」

「あぁ、流れ星だったな!」

「…なにお願いした?」


少し間があってから、は俺を見上げ、そう尋ねてきた。

「鬼の滅殺と、家族の無事を祈った。無論、君の出世もな」

「まぁ!」

茶化すように言うと、はまた鈴をころがすように笑った。



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