第11章 仲間
「うむ、よくやった!関節の動きなど、教えたことを活かしきれているな。」
「ーーっ!……ありがとう、ございます…。」
とっさに杏寿郎さんから目をそらす。
動揺…してしまった…。
型を褒めてくれた杏寿郎さんの笑顔が、
笑顔がすごく、素敵だったから…。
昨夜は、お花見の帰り道で彼に言われたことを
布団の中でも反芻してしまい、実は全然寝付けなかった。
そのことがあってか、
彼の笑顔に鼓動を早くさせてしまっている自分がいることを、嫌でも自覚してしまう。
杏寿朗さんは他の人にもこんな笑顔を見せてるのだろうか
この人のことだから、みんなにこう優しいのだろうと思うとなんだか…
……自分は拗ねているのだろうか
下衆な気持ちが湧いてきたので、それには気づかなかったことにした。
私は杏寿郎さんのように
自分の気持ちを素直に伝えられないのだ。
ーーー
ーー
ー
鴉によると、今晩の任務は以上のようなので
私たちは山を下りた。
杏寿郎さんについてしばらく歩いていると、街についた。
家に向かって歩いていると思っていたので、少し拍子抜けしたが
辺りの街灯のきらめきや、夜の街の様子が美しくて浮足立った。
まだそんなに遅い時間ではなかったので、カフェーや小物屋など開いている店もたくさんあり、辺りは多くの人がいた。
みな思い思いの時間を過ごしているのだろう、楽しそうだ。
せっかくだから、ということで、私たちもいっときの"夜のお出かけ"を楽しむことにした。