第2章 逢魔が時
市街地と思われる方へ、早歩きで向かう
(そういえば、お金っ… ほかにもっているものは…)
は、食べ物を買うお金や、なにか他にもっているものはないかと、歩きながら自分の身に着けているものを確認した。
幸運なことに、袖の中には櫛や紅が入った巾着、帯の間に小銭入れが挟まっていた。
(はっ…よかったぁ…)
小銭入れにいくら入っているのかを見ようと、
はそれを取り出し開いた。
すると、
チャリンっ………
小銭は体悪く入っていたのだろうか、
いくつか地面に落としてしまった。
転がる小銭を追いかける…
その先には書生の身なりをしている青年の姿があった。
青年は月を見ていたのだろうか
小川に沿って、等間隔に植えてある街路樹のそばで佇んでいた。
青年はに気が付くと、しゃがみ、小銭を拾ってくれた。
「すみません、ありがとうございます…」
と、はその青年にお礼を伝え、小銭を受け取ろうとしたその時、
ズシュッ…!
青年はの喉元をかき切ろうとした。
「きゃっ…」
(何をするの!?この人…)
は喉元に手を当て、傷を確認した。少し掠ってしまったようで、3センチほど切れてしまっていた。
傷口からは血が滲みだしている。
しかしその程度の傷で済んだのは、が彼の攻撃を反射的に回避することができたからである。
は彼の爪が喉に触れた瞬間、後ろに身を倒しそのまま片手を地面につけ、一回転をしたのだ。
そのまま後退したは青年と距離をとった。
なぜこんな芸当ができたのかは自分でもわからない。
ただ、体が勝手に動いたのだ。